羽子板と羽根の音のある、かつてのお正月の風景。

小さい頃、お正月には羽根つきをして遊んだものだった。少なくとも小学生の間は毎年羽子板を出してきて、母や姉を誘って羽根つきをした記憶がある。普段はバドミントンでもするところ、お正月だけは羽子板にむくろじの当たるカーン、カーンという音を聞きたくなるのだから、我ながら律儀な子どもだったと思う。始めたところで割とすぐに飽きてしまうのだが、羽子板で羽根を打ち返す硬質な感触は、乾いた音と並んで心地よいものとしてずっと残っている。


ところで当時、毎年さあ羽根つきと思うと羽根がなく、まずそれを買いに出ねばならなかったのだが、30年ほど前の当時ですら探すのに苦労したものだった。ある時までは行きつけの文房具店にあったのだが、しまいには大きめのスーパーをはしごして探したように思う。羽子板も同様で、一年のうち羽子板を見るのは「羽子板市」のニュースくらいなものになってしまった。羽子板市で見る、あのふっくらした美しい羽子板は飾りであって打ち合うのに使うものではないが、私と姉が持っていたような「実技用」のものを店頭で見かけることはほとんどない。今の子どもたちはお正月ならではの遊びなどしないのだろうか。あるいは欲しいとなればインターネットで手に入れることができるのかもしれないが、そうまでして羽根つきをする子どもは周辺にはいないようだ。あの高い音がどこからか聞こえてきたことは何年もないからだ。


お正月は、大人はとそ気分で機嫌がよく、子どももお年玉をもらってほくほくしており、お店が休んでいて街も静か。家族そろって初詣にでも出かければ、のどかな空気が時折カーン、カーンという羽子板の音を運ぶ。かつてはこんなイメージであったのに、年々その特別な感じが薄れ、普段と変わらないただの連休になりつつあるようだ。お店が開いていたりと便利なこともずいぶん増えたが、子どもたちが羽根つきも知らずに大きくなるのは残念でもあり、お正月を構成する要素のうちの一つを共有できないことがさみしくもある。

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